ここはゲームやら本やらアニメについてつれづれ語っている、雑多でまとまりないのが仕様な感想ブログです。長文に怯むことなく、楽しんでいただけたらば私狂喜。
2006/01/01(日) 00:00
緋色い瞳をぎらつかせながら、シキはアキラの元へ向かっていた。親衛隊長は居場所を告げなかったが、アキラの疾走する体に在る所有の証が軌道を銀色に揺らめかせながら、必然とシキに居場所を主張していた。シキに教えられた敵陣を乱す戦法を従順に遂行し、意志だけは己のものを強く持ちつつ舞うアキラとその証。さながら、その臍のピアスは、己が主にアキラの存在を誇張しているようで、答えるようにシキは視線を合わせた。緋色い視線を受けて、煌く所有の証。


高嶺の華、か。
全く・・・尽く従順な事だ。


暫くすると、導かれるように親衛隊長がやってきた。疲弊の色が見てとれた。アキラ同様、連日必死だったのだろう。どこか解せない顔でシキの瞳をまっすぐ見据え、現状を報告しようとしたが、やはりな、という面持ちでため息まじりに何か呟いたシキに呆気にとられたようだった。

「高嶺の華が低地で散る事はない。」

「・・・総帥・・・?」

「・・・・さて、お前は自身の軍をまとめておけ。あとで落ち合うとしよう。」

「はっ。」


確かに聞こえた。高嶺の華、と。
そうだ。高嶺の華というのは低地では存在しない。我々と同じ場所で咲く事はないのだ。
アキラ様が存在し得るのは、総帥シキ様の隣のみ−・・・
総帥の後姿が見えなくなってから、親衛隊長はその場に座り込んだ。先程まで隣に居たアキラの姿とその臍に在る銀色のピアスが脳裏に浮かぶ。異様な存在感を発していたそれが紅く光ったのを、確かに見た。
あれは、シキ様を求めて、自身の在るべき場所へ戻ろうとしていたのか。そして、シキ様の視線を受けて、応えていたのか。シキ様の隣に在るべく。
それでこそ、アキラ様は・・・高嶺の華、美しいのだな。
そうだと言わんばかりに、全身の血が活性した。ニコルウイルスによって。疑問は飛散し、疲弊も癒えてゆく。人知れず微笑み、決意新たに立ち上がって捉えたその世界は、緋色に包まれている気がして、従うように親衛隊長は軍をまとめるべく戦場へと向かった。この緋色の世界で、二人を護る為に。それが彼の、強さと成り得る。


アキラは崩れ落ちそうな壁に寄りかかり、ぐったりとしていた。麻酔が効いたのだろう、当分目を覚ましそうにない。こうでもしないとアキラの反抗心は収まらないからな、とシキは愉悦の笑みを浮かべ、そのままアキラの膝を抱え、肩に手を回し、アキラをその腕に抱き、再び敵兵士達の下へ歩き出した。
敵兵が二人に気付き銃を構えようとしたが、同じ装いの二人の内、どちらに狙いを定めるべきか困惑しているようだった。シキはその隙を見逃さない。アキラを左腕に抱え直し、銃口に向かっていくと同時に、右手に日本刀を握り締める。白銀の煌きと共に、驚愕に目を見開いたままの兵士達がどさどさと倒れる音がとめどなく響いた。無形の位、左腕にアキラを抱えたまま、銃口から軌道を読み取り怯む事なく・・・それを一瞬でやってのけるシキ。力こそが全てだと君臨する日本国総帥の持つ相応しい力。
ニコルウイルスを使いこなすシキの力。そして。

緋色い瞳が、虚空に・・・
吸い込まれてゆく。


粗方敵を切り殺したシキは、自身の中で血が沸騰しているのを感じた。全身が、嫌悪に逆立つ。恐怖のままnに挑んだあの戦場が、今一度ここに存在する感覚。この血臭と、常人離れした己の恐慌。自分自身に、恐怖しているのか・・・
克服したはずの恐怖。nの血を体内に取り込み、シキはその絶望に飲み込まれる事はなかったが、首に噛み付いた時に見えたnの不適な笑みはいつまでもシキを侵食し、翻弄していた。恐怖こそ克服できても、この荒んだ時代に利用されるだけだ、とnの血が戦慄く。だからこそ、力が要る。何にも頼らぬ、己のみの力が。シキの根本は其処にあった。nと決定的に違うのは、自分の意志で最強であろうとするその信念。カリスマ性を備えるシキではあったが、孤独故に最強であった過去は力への執着を益々高めた。nを追いかけnに執着しnを倒す為だけに生きてきたシキ。強くあろうと努めたシキの、原点。そして、その中に取り込まれたnの血、ニコルウイルス。強さへの執着は、止まらない。どこまでも。

あの男は、未だこの体の中で、生きている。

そう思えば、眼下に在る人間が皆、恐怖に怯えたあの戦場で死合った無防備で虚ろな兵士だと錯覚する。自覚のないままシキは恐怖を克服、否、否定しようと、理性も吹き飛ぶ程に暴走した。nを倒す為に。あの戦場で。



「なんだ、これは・・・」

数人しか残っていなかったアキラの軍を待機させ、アキラの元へ向かった親衛隊長が目にしたのは、肉塊の散乱だった。ありえない。あれだけ苦戦を強いられ、アキラが自身を見殺しにしろとまで恐れた銃器も、今この場ではただの塊だ。
総帥か・・・?しかし、この惨劇は明らかに異常だった。一撃で滅す総帥の刀は、無駄がない。こんな風に、相手が血を撒き散らして倒れているのはおかしい。
アキラを置いてきた一室は、敵陣の真ん中に在った。そこからそう離れた場所ではない。となると、やはり総帥しかいない。アキラの姿は既になかった。



体が・・・軽い。心地良くて、微電流のような快感と、欲望を刺激するこの匂い。シキの香り?
シキの緋色い瞳に全身を柔らかく包まれているような感覚を感じ、彷徨っていた思考が一点を目指して急速に体中を駆け巡ると、ぞぞぞと背筋が逆立った。
シキの、匂いが、悪寒をむず痒さに変える。下肢は疼きだし、頭の奥が痺れる。シキを求めて震える体と、血。血が沸騰する。相反する片割れを求めるように、ざわざわと蠢く内面。ニコルと非ニコル。運命共同体だ。


「・・っ・・・!!!」


突然走った微電流は、臍のピアスから全身へと一気に快感を伝えた。
シキがピアスを引っ掻いていたのだ。血が滲む程、強く。虚無の紅を、その瞳に宿して。
その光景に混乱しつつ、周りを見渡すとアキラの悪寒が現実となって視界に映った。
夥しい血臭、肉塊、そして広がる無。

アキラには、シキが未だnを追いかけているだろう事がなんとなくだが解っていた。
自分の力で、あの男を握りつぶす。
そう言って月夜、愛刀の手入れをしていたシキは、猛々しくどこまでも魅力的だったが、当時は反抗心でいっぱいだったアキラにとってどこか他人事だった為、第三者の視点で見得ていた。故に、シキと共に在る今、解ってしまったのだ。nの実体は地に還っても、nの血はシキの中にある。シキがそれに取り込まれる程弱くない事も解っていた。だが、朽ちる事のない強さへの執着心。弱者は必要ないという力による支配は、シキの憎悪を煽っている気がしてならない。適合したとはいえ、やはり精神を増幅させ、深層心理を肯定し実行できる能力を引き出すラインの原液を得たのだ。精神の活性が、nの血を摂取して得た力を否定したらどうなる。言っていたのだ。この手で握りつぶす、と。
シキとnに何があったかは知らないが、感情の感じられないシキのあの憎悪に満ちた顔はこの先も忘れる事はないだろう。だからこそ、それを抑制する非ニコルの保菌者である自分が傍らに在る必要がある。貴方は、間違ってなど、いない、と。
実際、アキラは其処まで明確に考慮していたわけではなかった。互いに、血が蠢くのだ。確かなのはアキラ。追随すべきはシキ。違えてしまえば、血が自身すら否定する。
そして、互いを得た時に味わう、互いの恍惚とした表情。強者の求める快感と、求められ与えられる快感を受け止め合い、理解し合う。さながら適合者と保菌者である二人の感じる快感は、常人には理解できないものだろう。快感なのか、安堵なのか、二人が繋がる事は必然だという前提で訪れるもの。

「・・・んっ・・は・・・・っ・・」

シキの指が、血に濡れだしたピアスを弄くる。ぐりぐりと強く押されれば、痛快から抗えない快楽が滲み出て、洩れる声が響いた。いつしかシキの瞳はアキラしか映さなくなっているようだった。アキラはそんなシキを愛しいと控えめに感じながら、滲み出た血を指で拭い、舌で舐めとり、シキの頬を両手で挟んだ。シキの表情は虚空に吸い込まれたように虚ろで、殺戮に飽きた瞳は静かな緋色を宿している。

確かめればいい。貴方の確信は、俺によって与えられる。
そして与えて欲しい。確固たる信念が齎す、最高の場を。炎のように揺らめく緋色の強い瞳を持ってして。実体のないものを追う必要などない。
貴方には、俺が、たった一人の俺が、居るのだから。


心地良い。一心同体、とはこういう状態の事を指すのか。何処かで翻弄していたであろう意識は、アキラの血に触れた舌から全身へその実感を得てゆく。
この甘美な味はアキラによってのみ、味わう事が可能だ。己とは、相反する血の味。無の中に在っても、この感覚が浮遊していく事は、ない。己の意志で、血が、体が、脳が、全身の全てで感じられる。外れていたピースがはまり、これでやっと完成する、そんな実感。アキラを感じる度、思い返す。ここからが始まりなのだ。あの男の残り香ごと、世界を手に入れてやる。
この国は、まだ小さい。いずれ、全てを手中に収める。その時、お前は。

俺の傍にいろ。


シキの瞳が、高嶺の華を捉えた時、世界は緋色に染まってゆく。そこでしか煌かない、華の為に。



「総帥?」

「無事なようだな。」

「いえ、総帥が救って下さったのでしょう?今回も、また」

「お前が俺を救ったのだ」

「???・・っ・・!!」

「さて、枯渇した勢力など所詮雑草に過ぎん。お前は、弱者に挑む必要はない。俺の目の届くところで、強く、美しく、輝いていろ。高嶺の華は、ここにあってこそ美しい。この証も、それを望んでいる。・・・この俺もな。」


夥しい血臭と地面の色、煙幕のような世界であっても。
堅実な意志を持つシキと、その隣で凛と輝くアキラには艶がある。相反する艶が。冷酷な美しさと強さを持つシキには近付く事を躊躇わせる威圧感があるが、傍らで伏し目がちな眼に、何事にも覆さんと強い意志を持ち、己が主につき従うアキラの姿は、兵士らが高嶺の華、と渇望するのもごく自然の事であった。ストイックな色気は、強者の集うこの軍で、鼻につくのだ。強さ故に。
それはまた、シキの隣でこそ漂うものであった。なぜなら、アキラの主は相応の力を得ているから。何人も、その力を打つ事はできない。事実、日本国総帥である事が、その証。兵達の、羨望の的だ。漢として、その志と曲がりない信念に、羨望すら超える憂いを向けずにはいられない。
確固たる信念は、強者の持ちうる自尊心。打ち砕かれれば、簡単に堕ちるそれは、誰もが持つ弱さと比例する。負ければ終幕、勝てば更なる先へ。進む事を恐れなければ、戻る事もまた、ない。

高嶺の華の意図する所は、自覚がないだけ飲み込みやすいな。兵達もまた然り、だ。その本能で、理解しているのだろう?俺の傍で味わう勝利に、この先も存分に酔いしれるがいい。
シキの瞳は、完全にアキラを捉え、虚無すらも緋色に塗り替えてゆく。それは恐怖の克服か、恐怖すらも跪かせたのか。シキらしい支配だった。追い続けたものに対して。

最強の覇王は、全てを緋色に染める。その世界で、飲み込まれ果てるか、染められてゆくか、染まってゆくか。
しかし高嶺の華は、その世界でこそ一層輝く。覇王の血と共に。



見つけた・・・
総帥と、アキラ様だ。総帥の圧倒的強さの前に疑念こそ抱いた私だが、恐怖する事はなかった。既に染まっているからだ。総帥の色に。

「アキラ様・・・」

そのお姿は、総帥によってもたらされた絶望すら感じる戦地であっても、凛として観る者を魅了する。
高嶺の、華。染まる事すら、超越しているのか。それとも既に染まりきっているのか。それは、私が知る必要は、ないな。
気付けば周囲の兵達は、色気すら感じられる覇王と傍らの華に、すっかり見入っている。全く戦地にふさわしくない、この光景。敵すらも既に緋色に染まっている。
勿論、自分も。
ふと、沸き起こる欲に気がついた。総帥に、あの覇王に、伝えたい。あるがままを。
「いつまでも、高嶺の華が貴方の傍で咲き誇れるように、お守りします」
疲弊しているはずの体はやけに軽く、そのままの足取りで親衛隊長は二人の元へ向かった。
低地で支える我々が土台をしっかり築く必要があるな。
そんな思いを胸に秘めて、無邪気に駆けて行った。




この後。
シキの軍に続いて「最強」と云われる軍が各地を揺るがせた。
シキによって磨かれたその体で、強く美しく君臨する総大将。無駄のない戦法で、相手を翻弄するその姿は、華の舞い散る様に似ている。一度見入ってしまえば、後は飲み込まれるのみ。



「アキラ」

「ん・・・シ、キ・・・っ・・はっ・・・」

最も、情事の上で咲き誇るのが一番美しいと知るのは、彼の主、シキだけだったが。
その味の、甘美さも。
甘い泣き声も。


−終−


シキティーにはいつまでもnにボロクソ言われて激情して欲しい。
前編から読んでくださった方、有難うございました。
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