ここはゲームやら本やらアニメについてつれづれ語っている、雑多でまとまりないのが仕様な感想ブログです。長文に怯むことなく、楽しんでいただけたらば私狂喜。
2006/01/01(日) 00:00

「総帥、アキラ様が・・・」


・・・やはりな。

言葉にするでもなく、そう息をついて我が総大将、総帥シキ様はその瞳を妖しく煌かせる。我が軍の大将ながら、その真っ直ぐな紅い眼差しに恍惚のため息を漏らさずにはいられない。
数多の死線を容易く乗り越え、常に先を見据える眼差し。美しく、妖艶で、冷酷なその瞳に陶酔する部下が多い事を、この方は理解しているだろう。さながら、傍にひっそりと咲く、甘い華にも。
それは恋慕の情か、羨望の眼差しか。どちらにしても、賞賛の憂いを浴びて輝くお二方。いつまでも酔っていたい、この緋色の世界。


「総帥っ・・総大将が、陣地を離れられては・・・」

「だからこそ、我が軍にお前達が必要なのだろう?」


総帥からの、身に余るお言葉。その場に努める誰もが、その言葉に酔いしれて、防御に一層磨きがかかる。
事実、総帥の軍が「最強」と云われる所以。




昨夜、執務を終えたシキの部屋に、今だ軍服に身を包んだアキラが訪れたのは、月も傾きかけた頃だった。ニコルウイルスを手に入れたシキと異なり、少々疲れを残す面持ちで、剥き出しの戦意を抑え付けながら言葉を選んで話し出す。
無論、シキにはそんなアキラの心中など手に取るように解っていた事だが。


「夜半すみません、総帥。例の反勢力についてですが」

「放っておけ」

「しかし・・!この居城にも、内通者がいるかもしれません!俺が・・」

「明日は戦地に赴く。お前は書類を片付けておけ。頼んだぞ。」

「俺は!総帥の邪魔になるものは・・・」

「あれはいずれ枯渇する。放っておいても害はない」

「・・・・」


アキラには、得体の知れない混濁があった。拭えない靄が。実体のないそれに、苛立ちを覚えていると、数日前からシキに反する勢力の一つが銃火器を強化し、襲撃を仕掛けてくる恐れがあるという部下からの報告を受けた。そこで靄の正体に気付いたのだ。シキの歩みを止めかねない、その反勢力に対する畏怖の念。シキは、銃火器は使わない。故に、シキの軍では銃火器を使用する者はいない。しかし、先日、銃火器の類が居城内で見つかったのだ。
それが靄の正体だ。強大なそれを実際目にして、アキラの中で飛散し、いつしか標的となっていた靄。
銃に、刀一本で向かっていくなど、無謀すぎる。枯渇するとはとても考えられない。しかし、自分の部隊で意表をつければ、勝てるかもしれない・・・。部下と秘密裏に練っていた策を、シキが戦場に赴く明日こそ、実行するべきだと人知れず扮していたアキラだが、シキの閑散とした態度に、辟易してしまった。


シキにとって、俺は欲望の捌け口でしか、ないのか・・・


連日の冴えないシキの反応に、アキラは気付かれないように落胆し、それでも自分の意志を伝えようと口を開いた、その際。


「しかし・・・・!!・・・ん・・・」


シキの舌が、アキラの口内を弄る。アキラの意図も反抗心も、全て吸い尽くさんと。
俺の全てはシキの為にある。シキの歩む道を、邪魔する者は切る。
絡みつく熱い舌と、洩れる吐息。強い意志に相乗するように、アキラは自身の所有者を護ってみせる、と決意さながら口内を暴れる舌に従順に応えた。
唇が離れ、伝う唾液の先、視界に現れたシキの紅い瞳に身を焦らせながら、アキラの決意は固まっていった。
邪魔する者は排除するのみ。シキの為にも・・・




「そろそろか・・・」

「総帥?」

戦地に赴くとアキラに伝えたシキだが、その実、総帥直属の軍を引き連れ、例の反勢力の拠点地近くに滞在していた。
部下達は従順だ。シキの解せない作戦にも、顔色一つ変えず対応している。いつもは軍服に身を包むシキだが、今日ばかりは、黒いコートに日本刀、部下達は知る由もないが、まさにトシマでの恰好そのもので戦地に君臨していた為、心なしかシキの脳裏にnの姿が過る。しかし、その様子は兵服に身を包んだ者達の中で目立つばかりか、銃の標的にされんばかりの佇まいだった。
だが、シキにはどうでも良い事だ。ニコルウイルスを手に入れたシキには。


全く、あいつは・・・

シキにはアキラの行動が手に取るように解っていた。昨夜のアキラの眼差しが脳裏を過る。熱すぎるアキラの舌が、自覚のないまま伝えていたのだ。己の主に。


見せてもらおう、アキラ。お前の気持ちを、な。
そして受け止めてやろう。お前自身を。
お前は、俺のものだ
勝手に死ぬのは、許さん


勝ち目がないアキラの部隊の襲撃に、シキはある手を打っていた。アキラの親衛隊長に、人知れず闘志を燃やすアキラを見張るように命令しておいたのだ。アキラに対して特別な感情を抱いている事は解っていた。だからこそ、だ。アキラに心酔する者が、アキラの自殺行為を咎めるのは自然の流れだ。そして、その時がきたら使うように、軽度の麻酔が入った注射器を、渡しておいた。
アキラの動きを止められれば、それでいい。
親衛隊長は、その時は自分が盾になりますとだけ言い、素直にそれを受け取った。
アキラを高嶺の華と仰ぐ者がいる、というのは事実だな・・・
最も、アキラには自覚すらないのだろうが。



「総帥!敵陣に、総帥と似た姿の者がおります!!あれは・・・あ、アキラ様!!?」



銃器の轟音と、煙の匂い。次第に陣形を崩されていくアキラの軍。
形態不利に見えるその実、総大将であるアキラは夜営に紛れ、親衛隊長と共にチャンスを狙っていた。部下の中でもシキへの忠義が堅い親衛隊長に、絶対的な信頼を寄せていたアキラだが、今回の作戦はさすがに気が引けた。

「俺を見殺しにしろ。」

敵陣に、シキの存在を知る者が多数いる事は解っていた。シキに恨みを持つ者がいるのだろう。以前のシキと同じ装いで、敵陣を翻弄する。その際に、敵の大将、拠点を崩せ、という作戦だった。一見無謀な作戦だが、確実に敵勢力の根を絶やすには、良作だった。こちらの総大将、つまりシキに敵の注意が全て向けば、他は散漫になる。拠点を潰すには、頭の死は絶対だ。動揺している所で、拠点を潰す。拠点を潰せば、武器や兵糧が絶え、勢力は潰えていく。

「アキラ様を見殺しにして、勝利を得ろと言うのですか?」

「・・・・。総帥の、役に立ちたいのだ。一度でいいから、あの人を護って差し上げたい。命と引き換えにしても」

アキラの、悲壮な想い。
いつも護られてばかりだ・・・
そう言って悲しく微笑むアキラの顔が、親衛隊長の脳裏を侵食する。

「解りました。では、私がアキラ様の背中をお守りする事をお許し下さい。私の意志は、アキラ様と共に。」

「・・・・。それで、いいのか?」

「私の全ては、アキラ様と共に在る」



そして。
全身を緊張が走りぬける。びりびりと震える体。
これは歓喜の震えだ・・・やっと、シキの役に立てる。臍のピアスに触れると、昨夜の熱いシキの舌が、思い出されて。
そんな疼きを払い去るように。

「行くぞ。」

一歩下がった所で、準備を整え待機している親衛隊長に、声をかける。返事を待たずに、爪先で地面を蹴って、敵陣へと突っ込む。
激しい銃器の煙と、耳を焼く轟音。敵がこちらに気付き、一斉に銃を構える。
訓練されているな・・・
しかし怯むことなく翻弄するアキラの姿に、親衛隊長は完全に見惚れていた。似て非なる二人。アキラの臍に煌くピアスが、より一層輝きを増す。所有の証。それを知る由もない親衛隊長だが、アキラのピアスが紅く光った事に驚愕した。

シキ様の瞳と、同じ、紅い、光・・・?

光の先を、疾走しながら絶えず変わる視界の中で追う。地面に朽ちる、鮮血とは違う、射抜くような紅い光。

なんだ・・・?

アキラを見失わないように、光の出所を探るのは難儀だ。だが・・
他を圧倒する、その存在感。紅い、瞳。世界が、紅い・・
あの、瞳は・・・・・・


「そ、総帥・・・・」

「????」

アキラが立ち止まり、振り返る気配。その背中にぶつかる。ちょうど、廃れたビルの一室だろうか、壊れかけ、隔離された小さな空間があった。そこにアキラを連れ込むべく、持っていた麻酔を・・・

「!!な・・・んだ・・・・」

無意識のまま、命を完遂すると、親衛隊長はそのままシキの元へと駆け出した。


−続ー
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