ここはゲームやら本やらアニメについてつれづれ語っている、雑多でまとまりないのが仕様な感想ブログです。長文に怯むことなく、楽しんでいただけたらば私狂喜。
2006/02/01(水) 00:00
まずは言い訳から(汗)

本当はこのSS、兄弟対決だったのです。燃える激闘。
そのつもりで進めていたら、とんでもなく長いハナシに(大汗)
トシマ大乱闘というサバイバルになってしまい、手に負えなくなったのです。こんな感じで・・・

隻腕の女は、廃墟の片隅で一隅のチャンスを狙っていた。獰猛な漢たちの隙を狙うには、身体能力が追いつかない。
握り締めた獲物を、身体の一部だと思い込む。
コルト・カバメント。
45口径。装弾数は7発。
不発は・・・許されない。射程距離は50m。これ以上近付く事も離れる事も不可能だ。

おいおいおいおいハードボイルドかよ!

なので戦闘燃えはやめました。兄弟対決のつもりがなんで銃なんだ!
決着後、リンは後悔とも嬉々ともとれない蔑みに襲われたんじゃないかと妄想しまして、リンの心情を掻い摘んでシキVSリンの脳内補完としました。


雨は降り続いている。ぽつぽつと雨が齎す色に染まっていった地面はアスファルトの威光など忘却の彼方へ投げ捨ててしまったように湿り気を帯びているような、乾ききったような、混濁が混じった色をしている。
無。
激しくぶつかりあった後に訪れる静寂は、何にも劣らず無感である。ただ、無 −

大きく見開かれた澄んだ色の瞳を持つあどけない立ち姿の少年は、その瞳を長い睫毛で隠していた。この漆黒であり無である世界で、彼の瞳は目立つ。しかし今だけは、虚無の世界と同化しているように見える。彼の感情に素直なその蒼い瞳はほんの数分前に宿していた激昂の焔を飲み込んでいて、彼の蒼い瞳を見つめるものがいるならば、大海原にいるような錯覚を覚えるだろう。
月明かりに反射して、少年の前に倒れる漆黒は、今だその存在感を誇張していた。僅かな吐息が聞こえる。吐息が。
二人の間に訪れる静寂はあくまでも二人のものだ。介入できる他者がいるとすれば、それはきっと大海原をも飲み込める許容範囲を持つ者だけだろう。
優しい霧雨の音と、地面が奏でる弾けたリズム、今にも消え入りそうな吐息をBGMに、漆黒の背中は昔年の相思を映し出した。スクリーンセイバーの如く、無の中で光り輝く思い出。そのなんと、美しいことか。哀しいものだ。乗り越えた心の痛みすら美しいとは。


「おれもいつか兄貴みたいに強くなるんだ!」

「お前だけは許さない・・・絶対にー!!!」

「また貴様か。」

「うるさい黙れ!!」

「久しぶりだな。」

「・・・・なんだよこれ・・・」


降り続く雨は夥しい血臭も血痕も全て洗い流してくれる。痛みも哀しみすらも凌駕してくれる。清い雨。このまま止まないで欲しい。もう少し。もう少しだけ。
この、絶対的な存在を見ていたいから。自分と、兄が生きた証。激昂の痕を。

「シキ・・・」

無意識にそう呟いていた事に気付くと同時に、右手に握っていた日本刀から鞘が滑り落ちた。音もなく。そのまま刀身を引き抜き、残っていた血糊を払う。握り締めていた黒い柄は、血の色と混ざり合い黒の度合いを増している。どこまでも主に似ている。冷ややかで美しいこの兄に。触れたら切り刻んでしまわれるような。
蒼い瞳を麗せて、金色に靡く髪から飛沫を飛ばした後、ゆっくりとリンは微笑んだ。

「この刀は、兄貴のものだから。一緒に置いておくよ。」

空気が揺れた。ただ静かに震えている。
廃れたこの街でも、やはりこの兄は美しい。敗北する様さえも。そんなところまで羨望を抱いてしまう自分に、リンは辟易した。どこまで兄を追いかければ気が済むのだろう、自分は。

「兄貴の刀は、おれが持っていくから。兄貴が生きた、証。」

もしかしたら、それは最大の侮辱かもしれなかった。天衣無縫の姿で構える兄、イルレの姿は自信が溢れ出ていて、冷ややかな顔に浮かんだ笑みは敗北の味など知る由もないのだろう。何か譲れないものの為に肉親をも切り捨てようと憤る兄は、兼ね備える強さも比例して魅力的ではあったが、それ故に失うものは彼自身しかないのだという事に気づいていたのだろうか。それ以外を失う事の、より深い哀しみを知らないのだ。他人は他人であり、慰みを受ける必要などない。そんな兄に対して、生きた証などと言える自分に疑問を抱く。これは絶対的な屈辱なのかもしれない。それでも、いい。あの温かさを知らない兄は、寂しいとか哀しいとか哀愁という感情を放棄してしまったのだ。それ故に最強なのだとしたら、自分はそれを寂しいとさえ思う。何処までも相容れない兄弟だな。そんな風に思う。
兄を羨望していた過去の自分は、盲目だったのかもしれない。アキラの温もりが、闇を溶かしてくれたんだ。熱に浮かされていた時に、唇に感じた温もり。必死な想い。生き急ぐ自分には、苦しい程温かかったんだ。勝てない事など承知の上で、最愛の人のいない世界から消え去りたかった。守れなかった自分は異端者のようで、裏切り者のレッテルは一生消えないのだから。


さて。どうやって脱出しようか。
さんざん追憶に想いを馳せると、現実にも闇は広がっているんだという実感が覚醒して苦笑ばかりが浮かんでしまう。
人の姿はなく、異世界に放り込まれたように静かだ。どこまでも漆黒が続いている。
ふと振り返ると、冷ややかな美しさに包まれた兄は完全に漆黒に染まっていた。景色と同化しているその姿がまた美しく、思わず目を細める。赤と黒。強い二つの色も混ざり合わさればただの黒だ。あんなに憧れ追い求めた赤も、この廃れた世界で今はただの黒でしかない。自分にはない赤い色も。黒、なのだ。

「つっ・・!!」

左足に激痛が走る。無残に切り落とされた、そこだけは赤い。そんな現実に思わず苦笑する。

「痛いな・・・」

この世界に出口はあるのだろうか。退廃した街“トシマ”。既に終わっているこの街。何が終わっているのか?・・・全て、だ。
それでも輝きを見つけた。がむしゃらに突っ走ってきた自分に、安らぎを与えてくれた。温かい彼の体。瞳。早くその元へ・・・。アキラの元へ。
今度こそ、本当の笑顔を見せてあげるから。突き放したりしないよ。
昔ね。おれの大事な人と約束したんだ。その人は星へ行きたいって言ってたんだ。思わず縋りついたら笑って言ってくれた。「一緒に行こう」って。
その人はね、おれには血が似合わないとも言ったんだ。やっぱりおれには赤って似合わないのかな。アキラはどう思う?

苦笑したまま無意識に振り返っていた。血のような赤を瞳に持っていたその男を。
地に伏していても存在感は消えない。足の痛みのせいにして、そのまま少し見つめていた。
兄貴、あんたはどう思う?冷酷なくせに瞳だけは焔のように赤く澄んでいて、絶対的な強さを持つあんたに心底憧れていた。追いつきたかった。おれを見て欲しかった。
でも今は、おれがあんたを見てる。おれだけが。兄貴はおれの全てを切り捨てたけど、おれは兄貴に憧れすぎて、憎む事しかできなかったのかな。そんな兄貴の死に様なんて、他の奴には見せたくなかった。

その時。雨雲の隙間から月明かりが差し込んだ。こんな廃れた街にはそぐわない一筋の光輝。その先にあるものを妖しく照らし出す。
リンは思わず息を呑んだ。呼吸する事も忘れ、瞬きもせず食い入るように目を見開いた。

「・・・・!!」

一瞬。
ほんの一瞬の出来事。
シキの艶やかな黒い髪が、月明かりに照らし出されて青く映えた。
彼の姿が脳裏を過る。秘めた想いが再び湧き上がる。かつて想いを寄せた、控えめで大人びた仲間。子供っぽい夢を持った彼。兄とは似ても似つかない想い人が、兄の姿に重なる。高鳴る鼓動をそのままにして、詰めていた息を吐き出した。
やっぱり、おれは兄貴の事も好きだったのかな。欲しかったのかな。


止まっていた時間が動き出すと、ペンキをぶちまけたかのように赤い血の海が視界に広がった。自分は、また失ってしまったのだろうか。仇はとった。否、それが生きる目的だったのかもしれない。兄に自分を見てもらう事。兄の世界に自分が存在する事。認めてもらう事。兄の強さを肌身で感じる事。歩みを止めない兄の前に立ちはだかる事。その赤い瞳に、自分の姿を見出す事。そしてそんな兄を、この手で・・・

「兄貴。おれはそんなに弱くないよね?」

返事はない。そんな事は解っているけれど。
ひとしきり感慨に耽ってからリンは再び歩きだした。自分の背丈程ある漆黒の日本刀を支えにして。その先に待ち受ける希望を目指して進む。ひたすら進む。がむしゃらに。
その姿はシキを追いかけ生き急いでいたリンと重なるように見えるが。
何処か大人びたように見える少年はその事に気付く由もなく。残酷にも時は流れる。地に響く轟音。内戦が始まったのだろう。
こんなところで死ぬわけにはいかない。乗り越えたのだから。自分にはアキラがいる。きっと待っててくれる。いつまでも。兄貴には呼んでもらえなかったけれど。アキラはきっと言ってくれる。同じ色の瞳で「リン」と。

歩みを進める度ごとに、リンの姿は憂いを増してゆく。きっと彼はここから大いに成長していくのだろう。たくさんの枷を、日本刀に宿して。鞘を縛る楔はもう、ない。

アキラ。こんな廃れた街でも満点の星空は綺麗だったよね。
アキラは星空に夢中で、おれはそんなアキラに少し欲情してたんだ。だってアキラの横顔が星空と同じくらい澄んでて綺麗だったんだ。だから。
今度はアキラに負けないくらい澄んだ空気の中で見たい。星空も、アキラも。
きっと綺麗だ、何もかも。
早く、雨、止むといいな。
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